2010年12月8日水曜日

金総書記の「金庫」、麻薬輸出で420億円

金総書記の「金庫」、麻薬輸出で420億円

【ワシントン=本間圭一、ソウル=竹腰雅彦】オバマ米政権は8月30日、北朝鮮の違法行為に対する新たな金融制裁を発動し、麻薬や武器取引を中心とする同国指導部の資金源を締め上げる方針を打ち出した。
資金凍結や対米取引禁止の制裁対象に新たに指定された3団体1個人のうち、朝鮮労働党の資金管理組織「39号室」は金正日(キムジョンイル)総書記の資金調達を担っており、北朝鮮トップを標的にしたのが特徴だ。イランやシリアへの大量破壊兵器移転の責任者も制裁対象とし、改めて拡散防止を強化する構えを示した。
◆偽ドル関与◆
「39号室」は、麻薬取引などで違法に外貨を獲得する総書記の資金調達の中枢で、金庫番の室長は総書記の高校同窓生だ。韓国メディアによると、海 外17支部と約100社の貿易会社を傘下に収め、銀行や鉱山も保有する。精巧な偽米ドル札「スーパーノート」製造や、マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジ ア」(BDA)を通じた資金洗浄にも関与したとされる。
北朝鮮の麻薬輸出は年間約5億ドル(約420億円)規模で、その利益から高級外車などのぜいたく品を総書記や側近のために購入してきたとされる。 不法ビジネスの利益は海外秘密口座に預金しているとされ、英紙デイリー・テレグラフは、韓国情報当局者らの話として、欧州の銀行に蓄えた秘密資金は約40 億ドル(約3360億円)と報じている。
◆「忠誠」を遮断◆
米財務省によると、今回、制裁対象とした理由は、〈1〉覚せい剤生産と、中国や韓国を通じた密売〈2〉総書記用に1500万ドル(約13億円)相 当の豪華ヨット2隻の購入計画。米国務省のロバート・アインホーン対イラン・北朝鮮制裁調整官は30日、記者団に、「制裁は指導者の行動を狙ったものだ」 と述べ、総書記の違法行為を追跡する方針を示した。
ぜいたく品は総書記が側近や幹部を懐柔する体制固めにも活用されてきたため、資金遮断は体制への「忠誠心」を奪う狙いもある。
◆武器輸出にもメス◆
残る2団体は、今年3月の韓国海軍哨戒艦沈没事件に関与したとされる工作機関「人民武力省偵察総局」と、その傘下の武器製造業「青松連合」で、潜 水艦やミサイルシステムを生産、イランに魚雷などを輸出してきた。北朝鮮はイランとの武器取引だけで年間20億ドル(約1680億円)の外貨収入を得てい るとされ、国務省筋によると、2団体がその取引の半数に関与し、その一部は総書記の個人資金になっているという。
また、オバマ政権は30日、既存の大統領令に基づき、大量破壊兵器拡散に関与したとして5団体3個人を制裁対象に追加したが、このうち、同党の 「第2経済委員会」は、党の軍需部門として総書記の指示を直接受ける「99号室」を管轄し、核・ミサイル開発や技術輸出の中枢を担う組織だ。
個人の制裁対象となった北朝鮮企業「南川江貿易」代表のユン・ホジン氏は、イランやシリアの核施設に必要な物資を与えたとされる核取引の黒幕で、 北京や瀋陽などを拠点にビジネスを展開したとされる。アインホーン氏は近く訪中する予定で、全容解明には中国の協力が不可欠となりそうだ。
(2010年9月1日15時25分  読売新聞)
 
 
 

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